魂の翻訳家です。今日は、あなたが一日に何度も使っているであろう、ひとつの言葉から始めさせてください。――「もったいない」。安売りの札を見て「もったいないから、買っておこう」。何年も使っていない物を前に「もったいないから、まだ取っておこう」。どちらも、ごく自然に口をついて出ますよね。けれど、少し立ち止まってみてください。「買う」と「捨てられない」は、行いとしては正反対です。にもかかわらず、同じ「もったいない」という言葉で、どちらも説明がついてしまう。ここに、静かな誤訳がひそんでいます。今日は、その「もったいない」という訳語の正体を、ゆっくりほどいていきましょう。あなたは、けちなのでも、だらしないのでもありません。ただ、ひとつの言葉に、二つの別の心を、まとめて訳してしまっていただけなのです。
・安いから買う/捨てられない――正反対に見える二つは、じつは同じ根から生えています
・断定はしません。「こう考えると腑に落ちる」ところまで、一緒に言葉にしていきます
・本コラムは娯楽・言い伝え・心の傾向を扱う読みものです。具体的なお金の判断は、必要に応じて専門家にご相談ください
魂の翻訳家納得・知性
占いは、当てるだけの道具ではありません。自分の心を読み解く、翻訳の作業でもあるのです。今日は、あなたが一日に何度も口にしている「もったいない」――その短い言葉の奥を、一緒にのぞいてみましょう。
「もったいない」は、疑いにくい言葉です
まず、確かめておきたいことがあります。「もったいない」は、とても評判のいい言葉です。慎ましく、物を大切にし、無駄をきらう――そんな美しい心の代名詞として、わたしたちは子どものころから聞かされてきました。だからこそ、この言葉は、疑いにくい。「もったいないから」と言えば、たいていの行いは、それだけで正しいことのように聞こえてしまうのです。
けれど、思い出してみてください。「もったいない」を理由に安いものを買い込んで、結局使い切れずに持て余したこと。「もったいない」を理由に古いものを取っておいて、部屋がだんだん狭くなっていったこと。もし心当たりがあるなら、その「もったいない」は、あなたが思っているほど、あなたの味方ではなかったのかもしれません。いい言葉であることと、あなたを豊かにしてくれることは、じつは別のことなのですね。今日は、その“いい言葉”の内側を、少しだけ勇気を出して、のぞいてみましょう。
正反対の二つが、同じ言葉から生えている
核心に近づきますね。あなたの「もったいない」には、じつは、まったく違う二つの場面が同居しています。ひとつは、「安いから、もったいないので買う」。もうひとつは、「使わないけれど、もったいないので捨てられない」。前者はお金を出す行い、後者は物をため込む行い。方向は、真逆です。それなのに、あなたの口は、どちらのときも同じ「もったいない」を選んでいる。ここが、見逃されがちな不思議です。
ためしに、その二つを、正直に訳し直してみましょう。「安いから買う」ときの本音は、たいてい「この値段で手に入る機会を、逃したくない」。「捨てられない」ときの本音は、たいてい「一度手に入れたものを、失いたくない」。――お気づきでしょうか。どちらも、根っこは「失いたくない」という、たったひとつの願いなのです。安いものを買うのは“これから得られたはずの得を失いたくない”から。古いものを捨てられないのは“すでに得たものを失いたくない”から。方向は逆でも、心の底にあるのは、同じ「損をしたくない、手放したくない」という怖さ。二つの「もったいない」は、別々の木に見えて、地面の下では、同じ一本の根でつながっていたのですね。
その根っこは、「失うのが怖い」という翻訳です
では、その根っこをもう少し掘ってみましょう。「もったいない」の奥にあるのは、多くの場合、「失うのが怖い」という、静かな不安です。人の心は、不思議なつくりをしていて、同じ千円でも、「千円もうかった喜び」より「千円損した痛み」のほうを、ずっと大きく感じるようにできています。得るうれしさより、失うつらさのほうが、体にこたえるのですね。
この“失いたくない”という心が、「もったいない」という、聞こえのいい言葉をまとって出てくる。すると、あなた自身も気づきにくくなります。「私は物を大切にする、しっかりした人間だ」と思っていられるからです。けれど、その内側で本当に動いているのは、大切にする心というより、手放すことへの恐れであることが、少なくありません。安いから買うのも、捨てられないのも、「今、決断して手放す(買わない・捨てる)ことで、後で損をしたら怖い」という、先回りの不安が、あなたを動かしている。――ここを責める必要は、まったくありません。「損をしたくない」と思うのは、生き物として、ごく自然な心です。ただ、その自然な怖さが「もったいない」という美しい服を着ると、正体が見えなくなり、いつのまにか、あなたの財布と部屋を、少しずつ圧迫していく。まずは、その“服の下”をそっと確かめておきましょう。
「持っている」ほど、心が満たされないのはなぜでしょう
ここで、多くの人がふしぎに思うことに触れておきます。「もったいない」を大切にして、安いものを逃さず買い、古いものを捨てずに取っておく。理屈で言えば、物はどんどん増えていくはずです。それなのに、なぜか心は、ちっとも豊かにならない。むしろ、物が増えるほど、なんとなく重苦しい――そんな覚えは、ありませんか。
これには、筋道があります。「失いたくない」を動機にためたものは、あなたにとって、“使うためのもの”ではなく、“失わないためのもの”になってしまうのです。使うためのものは、使うことで喜びを返してくれます。けれど、失わないためのものは、ただそこに在るだけで、あなたに喜びを返してはくれません。それどころか、「まだ使っていない」「取っておかなければ」という、小さな宿題として、心の隅にたまりつづける。物は増えているのに、満たされないのは、そのためです。あなたが集めていたのは、豊かさそのものではなく、「豊かさを失わないための保険」だった――こう考えると、あの重苦しさの正体が、すっと腑に落ちてきませんか。保険は、たくさん抱えるほど安心なようでいて、じつは、抱えるほど“失う不安”を確認しつづける道具でもあるのですね。
「もったいない」の奥にある、本当の願いを訳す
さて、ここからが、翻訳家の本領です。「もったいない」という言葉を、その奥にある本当の願いへと、ていねいに訳し直してみましょう。人は、物を失いたくないのではありません。物を通して感じている“安心”を、失いたくないのです。
「捨てられない」を最後まで訳すと、たいてい、こうなります。「これを手放したら、いつか困る自分を、守れなくなる気がする」。「安いから買う」を最後まで訳すと、たいてい、こうなります。「この機会を逃したら、賢く立ち回れなかった自分を、責めてしまう気がする」。――どうでしょう。どちらも、その奥にあるのは、物への執着というより、「ちゃんとした自分でいたい」「困らずに生きていきたい」という、まっとうな願いなのですね。あなたが本当に守りたかったのは、物ではなく、その願いのほうだったのです。「もったいない」という短い言葉が、その切実な中身を隠してしまっていた。だから、けちにも、ため込みにも、見えていただけなのですね。
“正しい翻訳”は、こうです
それでは、「もったいない」を、どう訳し直せばよいでしょう。わたしがおすすめするのは、この一語です。――「もったいない」=「大切にしたい」。似ているようで、まるで違います。「もったいない(=失いたくない)」は、物を“抱え込む”方向へ、あなたを引っぱります。けれど「大切にしたい」は、物を“生かす”方向へ、あなたを向けてくれるのです。
本当に大切にするとは、どういうことでしょう。しまい込んで、使わずに眠らせておくことでしょうか。それとも、ちゃんと使って、その役目をまっとうさせてあげることでしょうか。――大切な器を、戸棚の奥で埃をかぶらせておくのと、今日のお茶を、その器で味わうのと。物が本当に喜ぶのは、どちらでしょうね。「もったいない」を「大切にしたい」に訳し直すと、“手放さないこと”ではなく、“ちゃんと使い切ってあげること”が、物を大切にする道だと見えてきます。そして、今の自分が使い切れないものは、それを生かせる人へ、めぐらせてあげる。そこまで含めて、「大切にする」なのですね。正しい翻訳は、こうです。「もったいない」=「この物の値打ちを、いちばん生きる形で、まっとうさせてあげたい」。この訳語なら、抱え込む重さから、少し自由になれるのではないでしょうか。
今日からできる、“訳し直し”の小さな練習
抽象的な話で終わらせては、翻訳家の名がすたります。今日からできる練習を、ひとつお渡ししますね。「もったいない」という声が心に上がったら、すぐに従わず、こう問い返してみてください。「これは“失いたくない”の、もったいない? それとも、“大切にしたい”の、もったいない?」と。
安売りの札の前で、「もったいない」と手が伸びたら――「これは、失いたくない(買い逃したくない)の“もったいない”だな」と気づく。すると、多くの場合、手はそっと止まります。使い切る場面が思い浮かばないなら、それは“大切にしたい”ではなく“失いたくない”の声だったからです。反対に、長く使ってきた道具を、まだ生かせると感じるなら、それは“大切にしたい”の「もったいない」。堂々と、取っておいてよいのです。この一問を挟むだけで、同じ「もったいない」が、二つにほどけていきます。「もったいない」を最後まで翻訳すると、抱え込むための言い訳ではなく、物を生かすための合図に、姿を変えるのですね。
もうひとつ。「捨てられない」ものを前にしたときは、こう問い返してみてください。「これを手放したら、私は本当に困るだろうか。それとも、“困るかもしれない”という不安が、困るだろうか」と。たいていの場合、困るのは物がないことではなく、“手放すと決める”その一瞬の心細さのほうです。そして、その心細さは、手放したあと、驚くほど早く消えていきます。使わない物が一つ部屋を出ていくたびに、あなたの心は、ほんの少し軽くなる。失うことより、身軽になることのほうが、じつは豊かさに近い――これは、翻訳家として何度も見てきた、心の筋道です。
昔の「もったいない」は、めぐらせる言葉でした
ここで、この言葉の古い姿にも触れておきましょう。縁起や言い伝えの世界では、豊かさについて、こんなふうに語られてきました。「福は、めぐらせる人のところへ、くり返し訪れる」と。これは、非科学的な決めつけとしてではなく、心と暮らしの道理として、聞いていただきたい話です。
じつは「もったいない」という言葉は、もともと「物の値打ちを、十分に生かしきれていないのは惜しい」という、めぐらせる方向の心を含んでいたと言われます。抱え込んで眠らせることではなく、その物の“いのち”を、最後まで生かしてあげたい――そういう、あたたかいまなざしの言葉だったのですね。ところが、いつのまにか「失いたくないから抱え込む」という、逆向きの意味を、わたしたちは重ねて訳すようになってしまった。
面白いのは、“めぐらせる”暮らしをしている人ほど、お金や物との付き合いが、穏やかに整っていくことです。使い切れないものは、生かせる人へ手渡す。安いからと抱え込むより、今いる自分に必要なものを、ていねいに選ぶ。すると、部屋にも心にも“余白”が生まれ、その余白に、新しい良いものが、また入ってくる余地ができる。――昔の人は、この巡りを「めぐらせる人のところに福が来る」という、やさしい一言に翻訳して、伝えてきたのでしょうね。「もったいない」を「大切にして、めぐらせたい」と訳し直すことは、けちを手放して浪費に走ることでも、物を粗末にすることでもありません。物とお金に対して、落ち着いた大人の態度で向き合う、前向きな一歩なのです。抱え込む重さから、めぐらせる軽さへ。その真ん中の、穏やかな姿勢に、豊かさは静かに宿るのだと、わたしは思っています。
自分の“翻訳のクセ”を知るところから
とはいえ、自分が「もったいない」をどちら向きに訳しやすいかは、自分ではなかなか見えにくいものです。“失いたくない”に傾きやすい人もいれば、“めぐらせたい”に自然と向かう人もいる。お金を「不安の量」と訳す人、「愛情の代わり」と訳す人、「力」と訳す人――クセが違えば、抱え込む場所も、効くほどき方も、変わってきます。
金運の社の金運タイプ診断は、あなたがお金や物を、どんな言葉に“翻訳”しやすいか、その傾向をやさしく映し出す鏡のようなものです。自分のクセがわかると、「だから私は、ここでいつも手放せずにいたのか」と、腑に落ちる瞬間が訪れます。責めるためではなく、ほどくために、自分を知る。それが、訳し直しの、いちばん確かな出発点になります。
また、その日その日の心の向きをそっと整えたいときは、今日の金運を朝いちばんにのぞいてみてください。「今日は、使わないものを一つだけ、気持ちよく見送ってみよう」――そんな前向きな一語から一日が始まると、それ自体が、心を軽くする小さな“訳し直し”になります。占いや縁起は、自分の心を前向きに開いてくれる、あたたかな小さなよすがなのですから。もし、手放すことにためらいが残る日は、おみくじを一枚引いて、出てきた言葉を、背中をそっと押す手紙として受け取ってみるのも、よいものですよ。
結びに――大切にするとは、生かしてあげること
今日お伝えしたかったことを、ひとことに翻訳するなら、こうなります。あなたは、けちなのでも、だらしないのでもありません。「もったいない」という言葉に、“失いたくない”という怖さを、まとめて訳してしまっていただけ。その訳を「大切にして、生かしてあげたい」に書き換えれば、「もったいない」は、抱え込む重さから、物とお金をめぐらせる、軽やかな合図に変わります。
安いから買う、捨てられない――正反対に見えた二つが、じつは同じ“手放せなさ”から生えていた。そのことに気づけたなら、今日はもう、これまでとは違う一日の始まりです。手放すことは、失うことではありません。生かせる形へ、めぐらせてあげること。そして、めぐらせた先の余白に、また新しい良いものが訪れる。それは、少しも惜しいことではなく、むしろ、豊かさそのものへ近づく道なのです。
魂の翻訳家のコラムは、これからもひとつずつ、あなたとお金のあいだの“誤訳”を、静かにほどいていきます。また「もったいない」が、耳もとで「手放してはだめ」とささやいてきたら、いつでもここへ戻ってきてください。訳し直しは、何度でも、今日から始められます。――では、また次の一語で、お会いしましょう。
※本記事は占い・風水・古くからの言い伝えを、娯楽の範囲でご紹介するものです。記載の内容は効果や結果を保証するものではありません。宝くじ等の当選を保証するものではなく、ゲン担ぎ・縁起としてお楽しみください。暦(吉日)は流派・暦により差が出る場合があるため、実際の日付は最新の暦でご確認ください。健康・体調に関する判断は専門家にご相談ください。一部にプロモーション(PR)を含みます。
